お父さんのお父さんのおじいちゃんのそのまたお父さんの…と遡って行き、400年位前のご先祖様はもしかしたらお百姓さんをしていたのか?位であれば想像はつきます。
でも、そのおじいさんのお父さんのそのまたお母さんのおばあちゃんは…と、延々と200万年前まで遡ろうとすると、その頃のご先祖様は2本足で立っていたのかどうかさえ怪しい。
更に10億年遡って、自分のご先祖様がシアノバクテリアだったなんてお父さんの想像力では確実に限界を超えます。
しかも、ニワトリが先かタマゴが先か、夜も眠れないくらいにず~っと悩んでいたら、実はそのどちらでもなくて、原始地球で物質の集合体から生命の素になるものが産まれたなんてはっきり言って信じられません。
地球上の生命の進化は知識としては持っているけれど実感が湧かないのが何とも歯がゆい。
自分の経験したタイムスケールを超えた領域での想像力と言うのが生物学を勉強する上で大事なようです。
COSMOS
白状しますと前節のロゼッタ・ストーンのお話は、大昔の新聞連載から引用しました。
30年以上経ってもそのプロットを覚えているのだからその時に想像を絶するインパクトをもらったと言う事でしょう。
1978年の朝日新聞朝刊にはアメリカの天体物理学者であるカール・セーガン博士の翻訳文が連載されていました。
宇宙科学と生命の誕生に関わるドキュメンタリーでして、科学啓蒙書であり、メッセージ性が高いので哲学書っぽくも読めるその文章を毎日貪るように読んでいた記憶があります。
切り抜いてスクラップブックにしたりして。やがてCOSMOSというタイトルの本として出版され、それも読み耽る毎日。できることなら君たちにも読んで欲しい逸品です。
同名のドキュメンタリー番組が、原作者セーガン博士の出演で1980年に深夜枠で放送されると全てカセットテープに録音して毎日聞いていました。当時はまだビデオさえ無かったのです。
横内正(だったと思います)のナレーションで、『我々は何者で、何処から来て、何処へいくのか?』のオープニングを思い出すと今でも背中がゾクゾクします。
COSMOSの中にはセーガン博士の名言が数多く記されていますが、中でも特に印象深かったのが『地球上の全ての生命は同じ楽譜を使って生命の喜びを謳いあげている。しかし、奏でている曲は全く異なる』と言う一説。
バクテリアからヒトまで、生命の形は違うけど遺伝の原理は全く一緒であると共にその生物多様性の重要性を語っていた訳です。
宇宙カレンダー
セーガン博士は、宇宙の150億年の歴史を1年間に置き換えて、星・銀河・宇宙で起こったイベントを解説していました。宇宙カレンダーと言います。
宇宙の誕生(ビックバン)を1月1日の0時0分0秒とし、現在を12月31日の24時00分として150億年を365日に例えたらどうなるか、判り易くしてみようと作られたカレンダーです。
- 1月 0時0分0秒 ビックバン
- 2月 最初の恒星と銀河ができた。
- 3月 銀河の形成が進む。
- 4月 私たちの銀河系が出来始める。
- 5月 銀河系の中に最初の恒星が誕生。
- 6月 巨大な星が超新星の爆発を起こす。
- 7月 超新星の欠片から新しい星が生まれる。
- 8月上旬 多くの恒星の誕生。下旬太陽系が出来始める。
- 9月上旬 太陽系が出来る。中旬地球と月が出来る。下旬生命が芽生え始める。
- 10月上旬 藻類が発生。下旬初期の大気が出来始める。
- 11月上旬 大気の中に酸素が増え始める。下旬月が地球から遠ざかる。
- 12月18日 三葉虫が栄える。19日 最初の魚が誕生。
- 20日 植物が陸に上がり始める。21日 動物が陸に上がり始める。
- 23日 最初の爬虫類が誕生。26日 最初の哺乳類が誕生。
- 31日 20時30分 最初の人類が登場。
- 31日 23時59分50秒 ~ 人類に文明らしきものが発生
宇宙カレンダーの1秒は実際の時間の500年に相当するため、最後のたった10秒間が人類の歴史です。
宇宙の歴史の中ではヒトの命なんてほんの一瞬の煌きですらなさそうですね。産業革命後の人口増加と二酸化炭素増加による温暖化だってわずか0.15秒の物語です。
生命の誕生と言うのは、極めて長い年月と偶然を経てようやく到達された奇跡の結果であり、宇宙の中でも生命の存在確率が極めて低い事を博士は説明しようとしていました。『だから、物凄い偶然で生まれた地球の生命をもっと大切にしようよ』と言うのがメッセージだったりします。
でも、1000億の銀河にそれぞれ1000億の恒星があり、その中の無数の惑星の中に生命は生まれていないと否定する事は決して出来ないとの研究結果もまた博士は主張していました。
『我々は、宇宙の中で決して一人ぼっちではないよ』が、もう一つのメッセージです。