お父さんの社会科見学<2日目>

お父さんの社会科見学

2日目です。

今日は沖縄北部に出掛け、念願の古宇利大橋を体験できました。 歩いて往復 全4キロメートルです。 古宇利島のビーチでは君達に頼まれた貝殻を探したのですが、枝サンゴの欠片ばかりでキレイな貝はなかなかありません。 また明日も頑張ります。

帰る途中、泡盛の蔵元の工場見学に行ってきました。 泡盛と言うのは沖縄特産のお酒の事です。 その昔、お酒の強さを調べるときにグラスに勢い良く注いだ時に立つ泡でアルコール度数を調べました。 このお酒はグラスから泡が盛り上がる位に強いお酒なのでこう呼ばれるようになったそうです。

工場に行ってみると香港の団体さんが居ましたので一緒になって英語の説明を聞きました。直売所のお兄さんがペラペラと流暢な英語を操ります。 沖縄では米軍基地があるから英語の得意な人が多いのだね。 きっと。

まず案内されたのは原料を受け入れる倉庫でした。 大きなタンクが10個位並んでいて 1回の仕込みにタイのお米6000kg(6トン)を使います。 そこに水を4トン入れて合計10トンで開始です。

タイのお米は日本のお米よりだいぶ細長い形でした。 インディカ米と言い、気候の暖かい地域でとれるお米です。 仕込みの時にはお米と水だけでなく黒コウジと言うカビを入れます。このカビがお米のデンプンを糖に変換してくれます。

そこに酵母を足すと発酵して糖がアルコールに変わります。 原理は日本酒と同じだね。

日本酒と違うのは一般的な黄コウジではなく黒コウジを使うところです。 黒コウジは暑さに強いので沖縄にはちょうど良い。 また、発酵の途中で黒コウジがクエン酸を出すので、お酒が腐らないようにする効果もあるのだそうです。 日本酒では腐るのを防ぐため、仕込みは一年で一番寒い時期にしか出来ませんからそこもまた大きく違いますね。

お父さんが見た貯蔵用の建物は築20年でしたが、外見は真っ黒に古ぼけていました。 全部黒コウジカビに覆われているからだそうです。

さて、泡盛はもうひと手間蒸留と言う作業を加えます。

ポットスチル(単式蒸留)と言う装置で発酵の終わったお酒の元に熱を加え、出てきた蒸気を冷やしてアルコール分と香りを濃縮するのです。 真鍮で出来ていて、高さが6メートルくらいある大がかりですごく絵になるカッコいい機械なのですが、写真に撮ってはいけませんと言われました。

理由を聞いたら、ポットスチルの装置には企業秘密がいっぱいあって余り知られたくないのだそうです。 例えば ポットの首の部分の長さや絞り具合が少し違っただけで風味と香りが変わってしまうからです。 ですので、後で製造工場のミニチュアの写真だけ撮ってきました。

この蒸留の作業でアルコールは18%から44%に濃くなります。 そしてそれを6ヶ月ほど熟成させると出荷です。

更にこれを木の樽やカメに入れて3年くらい熟成させると良い香りがついて古酒(クースー)になります。 体育館のような広い熟成倉庫の中には何百本もの樽が寝かされていて壮観でした。

昔の皇帝に献上するようなクースーは150年も熟成させたそうです。 気の遠くなるような話ですね。 以前は沖縄でも沢山のクースーを熟成させていましたが、太平洋戦争で沖縄が戦地になってしまった事からみんな失われてしまいました。 悲しいですね。

でも お父さんが見学した工場では100年クースーを作るために再び樽詰しました。 今年で30年目だそうです。 飲めるまで あと70年だね。 戦争のない世界がこれからもずっと続きますようにとの願いを込めて採算は度外視して熟成中なのだそうです。

一通りの見学を終えたあと、小さな小さな瓶で泡盛のお土産を戴きました。 君たちはまだ飲めませんのでお母さんと味見します。その代わりと言っては何ですが、70年後のクースーが飲めるかもしれませんよ。

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