通勤電車の中でたまに手を繋いで見つめあっている中年男性同士のカップルに出くわす事があります。途中の駅で降りて行くのですが、いつも仲睦まじく大変微笑ましい。
いわゆるホモな方々だと思うのですが、正しくはホモセクシャル12と言います。
これに限らず、生命科学関連でホモが頭に付く言葉が色々あります。
ホモ~と言う単語には、同質の・均質な・同等の・区別のつかない・似たもの・よく似たと言う意味があります。元々は古代ギリシャ語から来ているのだそうです。
だからホモセクシャルと言えば同質なヒトどうしがくっついているのですね。
身近なホモとしてはホモ牛乳3なるものがあります。
均質に混ぜ合わせる事をホモジナイズ4すると言い、混ぜ合わせたものがホモジネート5です。
牛乳は小さな脂肪の粒々6が分散して光の散乱の加減で白く見える液体です。
絞りたての牛乳は元々いろんな大きさの脂肪滴でできているので、チーズとかバターとか作り易いのですが、工業製品としての牛乳を考えると品質がバラついて都合が悪い。そこで、牛乳をよくホモジナイズして、脂肪滴のサイズを小さく揃えたのがホモ牛乳です。
ホモ
後に遺伝子とかゲノムとか発現タンパク質の機能とか遺伝病とかをやり始めるとHomoの付く単語がたくさん出てきます。
我々のように有性生殖を行う生物は、ほとんどが二倍体78と言いまして、体の細胞の核内にある遺伝子は、お父さんから来た遺伝子のセットとお母さんから来た遺伝子のセットで出来ています。
だから、お父さんにも、お母さんにも似ているのですね9。
遺伝子のセットの中には、ヒトの体を形作るタンパク質の全ての設計図が詰まっています。それが2セット有るのですから、同じタンパク質を作る設計図もお父さん由来のものと、お母さん由来のものの2つがあります。
これは体を構成するほぼ全ての細胞に共通して2セットずつあります10。
一つの遺伝子に着目して見たときに、お父さんから来たものとお母さんから来たものの形が全く同一であれば、それはホモザイゴート11であると言います。
遺伝子が同じなら、出来上がったタンパク質も全く一緒なのです。もし、そのタンパク質がうまく働かないタイプのものだったとしたら具合が悪い。劣性ホモと言って遺伝病の原因の一つです。
多様性の無い、あるいは少ない集団の事をホモジニアス12であると言い、血統書付きのワンちゃんが、遺伝的にとても脆弱で病気になり易いというのはこんな事が原因です。
人間の都合で同じ系統で交配を繰り返してホモジニアスにしちゃったのですね。
話替わって別の例。タンパク質は酵素にしろ、抗体にしろ、受容体にしろ、一つのタンパク質のまま体内で働いている方が少なく、多くの場合、幾つかのタンパク質がくっついて働いています。
タンパク質複合体と呼びますが、全く同じタンパク質が2つで出来ている場合にはホモダイマー1314と呼びます。タンパク質の機能とか考えだすと必要になってきます。
ヘテロ
さて、ホモの反対語は何かと言うとヘテロ。
ヘテロジーニアス15と言えば不均一な・不均一性の・異種性の・異種起源の・異質なという時に使います。
以上を論理的に展開すると、ヘテロザイゴート16は、お父さん由来の遺伝子とお母さん由来の遺伝子がちょっと違う事を意味し、ヘテロダイマー17は別々のタンパク質がくっついてできた二量体と言う事が理解できるでしょう。
また、ヘテロセクシャル18と言えば、これを読んでくれている大部分のヒトの事になるはずです。
ホモ蛇足
同じ響きを持つ単語でホモ・サピエンスと言うのは聞いた事が有るでしょう。
簡単に言うと我々人類の事です。難しく言うと哺乳類霊長目、サル目ヒト科ヒト属の学名の事です。
種の名称とか属の名称はラテン語で書かれますので古代ギリシャ語由来のホモとは、たまたま綴りと読みが同じだったというだけで、同質のと言う意味はありません。
時代の古い順で、ホモ属の学名を並べてみるとこんな感じになります。
現在はホモ・サピエンスしか居ません。残りは絶滅してしまいました。ちょっと寂しい。
- ホモ・フローレシエンシス:Homo.Floresiensis
- ホモ・ルドルフエンシス:Homo.Rudolfensis
- ホモ・ハビリス:Homo.Habilis
- ホモ・エルガステル:Homo.Ergaster
- ホモ・エレクトス:Homo.Erectus
- ホモ・アンテセッサー:Homo.Antecessor
- ホモ・ハイデルベルゲンシス:Homo.Heidelbergensis
- ホモ・ネアンデルターレンシス:Homo.Neanderthalensis
- ホモ・サピエンス:Homo.Sapiens
ホモ・ハビリスと時期的に重なっていたと思われますが、アウストラロピテクス属19と言うのも居ました。今は全て絶滅しています。かなり寂しい。
お父さん解説
- ホモセクシャル:Homosexual
- 女性同士でホモ と言わないのはなぜか?
- ホモソーセージ と言うのもある
- ホモジナイズ:homogenize
- ホモジネート:homogenate
- 脂肪の粒々:脂肪滴と言う
- 二倍体:ディプロイドdiploid
- 種無しブドウ、種無しスイカは受粉させる時にジベレリンと言う有糸分裂阻害剤を与えるため、減数分裂が阻害されるそのため、4倍体になりタネができない
- 娘&息子を見ていると自分に似ていてうれしい時と腹の立つ時がある。腹の立つ時の方が圧倒的に多い
- このセットの事を「ゲノム」と言う
- ホモ接合体:ホモザイゴート:homozygote
- ホモジニアス:homogeneous:均一・同種の・均質な
- ホモ二量体:homodimer:ホモダイマー
- ダイマー の「ダイ」は「2つの」と言う意味のギリシャ語
- ヘテロジーニアス:heterogeneous
- ヘテロ接合体:ヘテロザイゴート:heterozygote
- ヘテロダイマー:heterodimer
- ヘテロセクシャル:heterosexual
- アウストラロピテクス・アナメンシスAustralopithecus.Anamensis
アウストラロピテクス・バーレルガザリAustralopithecus.Bahrelghazali
アウストラロピテクス・アファレンシスAustralopithecus.Afarensis
アウストラロピテクス・アフリカヌスAustralopithecus.Africanus
アウストラロピテクス・ガルヒAustralopithecus.Garhi
アウストラロピテクス・セディバAustralopithecus.Sediba