HbA1c

何でも運びます

HbA1cのHbはヘモグロビンの事。

ヘモグロビンには、分子の形の違う3種類が知られています。正確に言うとヘモグロビンのうちのグロビンの部分を構成する分子の種類に違いがあります。

それらはメジャーなヘモグロビンA(HbA)とその他マイナーなヘモグロビンA2(HbA2)そしてヘモグロビンF(HbF)胎児ヘモグロビンの3つ。

糖尿病関連の臨床検査でHbA1cと言えば、糖化1されたHbAの相対的存在比率を調べた結果の事。

この検査は分離分析のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と言う高度な分析装置を使う2ところに特徴が有ります。

分析結果はクロマトグラムと呼ばれるチャートで示され、その構成成分がそれぞれ何%あるかを分離された順番に示してくれます。糖化されたHbA1はクロマトグラム上で細かく分離され、分離された順番にa、b、cと名前がつけられました。

だから糖化されたHbA1のクロマトグラム上の3番目ピークがHbA1cと呼ばれるようになりました。

HbA1は全体の中で占める割合が多く、糖化されたものも比較的検出しやすいので、糖尿病患者さんの過去の血糖値コントロール指標として国際的に活用されています。

HbA1cとクロマトグラフィー

HbA1cなるもの、2~3ヶ月間程度の過去の血糖コントロール指標としてほぼ定着しました。HbA1cの検査は、他の生化学的検査とは異なり、分離分析のためにHPLCと言う高度な分析装置3を使うのでした。

HPLCの分析結果は、クロマトグラムと呼ばれるチャートの形で分離結果が示されます。幾つかの波が見えていますが、一つ一つの山をピークと呼び、ピーク一つ一つが分離された分子1種類1種類とそれぞれ対応します。

このクロマトグラムという奴、分離されたピーク下の面積が対応する分子の存在量を反映します4。簡単に言うと、でかいピークはその分子がたくさんあると言う事を意味します。

糖尿病の国際診断基準

2010年になりまして糖尿病の診断には大きなトピックがありました。国際的に診断基準が見直されて国際標準化が開始された事です。

その準備のためにアメリカを含む世界各国での測定結果と日本での測定結果をよく調べたところ、両者に解離が存在する事が判ってきました。

何と日本で測っていたHbA1cのピークとその他の国で測っていたHbA1cと思っていたピークは含まれているものが違っていたのだそうです。日本では純粋にHbA1cを測定していました。

ところがその他の国で測定してHbA1cと思っていたピークにはちょっとだけ不純物が混じっていました。見かけ上日本で測定した値は世界の値よりも低く出てしまっていたのです。

こんな紆余曲折はあったものの、今後の測定方法と標準品を世界的に取り決めましたのでこれからは問題ありません。でも、過去のデータの取扱いに関しては利害が対立してうまくまとまりません。

こうなると日本はもうダメ。アメリカを含む世界で測っていたものは、臨床研究における膨大な蓄積データが有りますからこれを変えて混乱させるのは得策ではない。

後から始めた日本の測定値をいじる方が世界的な混乱が無くて良いとのコンセンサスが(日本を除く世界で)得られ、日本の測定値に0・4%を足した数値が世界の測定値と同じであると定義されてしまいました。

このため2010年7月1日以降で、文献とか学会報告とか症例報告とかを海外に送る際、日本で測定した古い規格の値を書かなければならない時は例えば5.9%(JDS)の様に注釈カッコ書きをしなければなりません。

精密に測ったほうが国際標準から外れて貧乏クジを引く事になってしまったのです。

ビデオデッキの黎明期に、VHSとβでは性能的にβが優位だったのに、マーケッティングで負けてβはその後撤退してしまったのに似ています。ちょっと違うか?


お父さん解説

  1. 「糖化」とは、血液中のグルコースと長く接触していた事により、糖(グルコース)がひっついてしまった状態を言い、糖がひっついたヘモグロビンをひっくるめてグリケーティッドヘモグロビン(GlycatedHemoglobin・G-Hb)と呼ぶ
  2. 高速液体クロマトグラフィー:High-Performance Liquid Chromatography:HPLC 現在はHPLCを使わないで済む測定方法もたくさん出てきましたが、昔は(お父さんが測定していた時代は…)めんどくさい測定だった
  3. 関係者は「はHPLCの事を単に「液クロ」と呼んでいる
  4. 大昔はクロマトグラムのピーク面積を計算するようなソフトも解析装置も無かったので、ピークに沿ってチャート紙を切り取り、その重さをmg単位で測って面積の代わりとするというとてもチマチマとした作業をしていた
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