好酸球など

何でも運びます

好酸球はEosinophil(エオシノフィル)、好塩基球はBasophil(バソフィル)の日本語訳です。

好酸球、好塩基球共に血液中に見られる白血球の一種1でして、臨床検査でEos 5.0%、Baso 0.5%のように報告されて来るのを見かけます。

エオシノフィルは、Eosin(エオシン)と言う赤い色素でよく染まるところからこの名前がつきました。後ろにひっついている-philと言う言葉は、元々はラテン語で好きと言う意味です。

ストレートに言うとEosinophilはEosinが好き。血液標本をスライドにして染色像を光学顕微鏡で見たときに細胞の核以外の部分が真っ赤な粒々で占められているのが好酸球です。つまりエオシンは赤い酸性の色素なのです。

日本語にする時に酸が好き →『好酸球』となりました。

好酸球

細胞はほぼ無色透明なので、血液をそのまま顕微鏡で観察してもウスボンヤリとしか見えず、「これは何とか細胞だっ」と判るような事はほとんどありません2

そのため、顕微鏡観察する時は色素を使って細胞を染めてあげるのが通常の手法でして、誰にでも簡単にできるH&E染色が血球系の細胞に限らず、良く使われています。

H&E染色はヘマトキシリン-エオシン染色の略称で、2種類の色素で染める方法です。

ヘマトキシリンは青紫色の色素、エオシンは赤い色の色素です。それぞれに別の性格を持っていて、ヘマトキシリンは塩基性(アルカリ性)、エオシンは酸性の性質を持っています。

性質が違うので、それぞれ別の相手にくっつきます。酸はアルカリが好き。アルカリは酸が好き。というわけでお互いに惹かれ合ってひっつくと中和3と言う反応になります。

そういう訳で細胞の中に塩基性の粒々4をたくさん持っていて、この顆粒がエオシンで赤く染まる白血球が好酸球です。

好酸球の中身、塩基性の顆粒は、メジャーベーシックプロテイン(MBP)5とかエオシノフィルカチオニックプロテイン(ECP)6とか呼ばれるものが詰まっていて7、これらは寄生虫をやっつける強力な武器になります。細胞の持っている機能と染まり具合が相関するわけです。

現代では先進国で衛生状態が良くなり、寄生虫感染が少なくなった事で出番が無くなってしまい、替わりに似たようなメカニズムで起こるアレルギー、すなわち喘息とか、アレルギー性皮膚炎で好酸球性炎症を引き起こす事から悪者扱いになってしまいました8。本来はいい奴です。

一方、似たような白血球の仲間に、好塩基球というのがいます。コチラは塩基性9の色素であるHematoxylinが好き。ヘマトキシリンは塩基性の色素であるのでBaseが好き→『Basophil』となりました。

好塩基球の働きは2000年頃はまだよく判っておらず、似たような顆粒を持つ肥満細胞の親戚筋のような取扱いしかされていませんでした。2005年頃からですが、ようやく慢性炎症の引き金を引く重要な白血球ではないかと言われる様な研究成果が出てきた所です。

さて、白血球の中で、好酸球は、有ってもせいぜい5%位、好塩基球に至っては0.5%位とマイナーな存在です。その他大勢のどっちにも染まらない連中を好中球ニュートロフィル10と呼んでいます。

別に中性が好きな訳ではなく、ヘマトキシリン、エオシンのどちらにも染まらないので中途半端な名前になりました11

染色像ではどの細胞も中に青く濃く染まる大きな構造物を見ることができます。

これは細胞の中に有る核です。核の中には遺伝暗号の本体である核酸が詰まっています。核酸と呼ぶ位ですから当然酸性でして、ヘマトキシリンで真っ青に染まると言うわけでした12


お父さん解説

  1. 白血球分画として、他には Neutrophil 好中球、Lymphocyte リンパ球 が大事
  2. 赤血球は赤いので判る
  3. 中和:neutralization
  4. 塩基性の粒々:顆粒と呼ぶ
  5. MBP:Major basic protein
  6. ECP:eosinophil cationic protein
  7. 他に eosinophil peroxidase (EPO)、eosinophil-derived neurotoxin (EDN) なんていうのが 顆粒に含まれる
  8. 寄生虫感染に対する感染防御システムとしては、IgE と言うクラスの抗体が惹起されると言うのが有名。
    喘息やアトピー性皮膚炎など、アレルギー性の疾患では、血中にある抗原特異的IgEの濃度を測ったりもする。
    好酸球性炎症とは、本来、外来の寄生虫等をやっつけるべき好酸球が、塩基性顆粒を使って自分の組織をやっつける事で発生する   特に喘息
  9. 塩基性:BasicとかBaseと言う
  10. ニュートロフィル:Neutrophil。:中性=Neutralだから
  11. 好中球には、核の形の違いで「Stab/桿状核」と「Seg/分葉核」の2種類がある
  12. 核があれば、それが青く染まる。造血幹細胞から分化して色々な血球経細胞が出来上がる時、赤血球と血小板では「脱核」して核が無くなる。だからこの二つでは中身は何にも染まらない
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